むらさきのスカートの女(2021)
作家・今村夏子【2019】
ある近所に、二人のカラフルな服を着ている女性がいる。一人は「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性で、もう一人は彼女のことをずっと監視している、黄色いカーディガンの「わたし」だ。
芥川賞を受賞した作家・今村夏子はこの小説で、ある女性の他の女性に対しての執着を描く。
ちなみに普段、日本語をまだ勉強している私にとって、日本語の本を読むことは英語の本を読むことより、結構時間はかかる。知らない単語はいつもあるし(なんで減らないのだろう)、意味不明の文もあったりする。しかしこの小説は多分、今まで日本語で読んできた本の中で一番速く読んだものだと思う。読み始めたら、放っておけなかった。
語り主はなぜむらさきのスカートの女をしつこく観察しているかというと、彼女と友達になりたいからだ。知らない人と一体どうやって友達になれるかを、以下のように考える:
「いきなり声をかけるのは変だ。おそらくむらさきのスカートの女は今まで一度も「友達になりませんか」なんて声をかけられた経験が無いだろう。わたしだって無い…そんな出会い方は不自然だ。ナンパじゃないんだから。」
ここで面白いと思ったのは、語り主の「変」や「不自然」の定義だった。
知らない人に「友達になりませんか?」って言うのは変だと意識しているのに、同じ知らない人を毎日監視するのは普通だと思っている。
公園でいきなり声をかけるのは不自然だけど、コンビニで求人情報誌をもらい、自分と同じ職場の求人口を蛍光マーカーで丸をして、公園まで持ってその人の好きなベンチに乗せるのは「自然」な出会い方らしい。
こうやって「変」だと思われるはずの語り主も、ある程度「普通」でいることを大事にしている。友達の作り方はいくら変わっていても、友達になりたいという願望も普通だろう。
ある意味、彼女と共感できた。大人になると、友達を作ることは時にはとても難しいことだと思う。読んでいる途中、ある(冗談の)ツイートを思い出した:「イエスの一番見事な奇跡と言えば、30代で12人の友人がいたということだ」
東京に住んでいた5年間の中で、一年間ぐらいは彼氏以外に友達はほとんどいなかった。とても寂しかった。道で友達に囲まれた、自信ありげな同じ年齢に見える女性を見たら、私もその人と友達になりたいと思っていたかも。
語り主を可哀そうだと思う時もあった。周りの人は彼女のことを見向きもしない。同じ空間に入っている人たちに気付かれなかったり、声を出しても聞かれなかったりする。自分のことを「黄色いカーディガンの女」だと名付けているけど、「透明マントの女」の言い方が近いのかもしれない。
しかしだからと言って、ストーカー行為をしてもOKだとは言ってない!むらさきのスカートの女を放っておいてほしかった。
むらさきのスカートの女はただ自分の人生を送ろうとしているのに、まったく知らない人の人生の主人公になってしまった。目立とうともしないのに、いつも見られている。語り主はもちろん、同僚も、私たち読者も、彼女のことを飽きもせず見ている。
いい意味で、とても不思議な小説だった。そして長くないのに、いっぱい考えさせられた。誰がいい人で、誰が良くないのかを、読めば読むほど分からなくなってきた。
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この本で覚えた5つの単語をここに書きたいと思っていたけど、単語リストをもう一回見たら、どれがこの本から拾った言葉なのかをさっぱり忘れてしまった…ということで、今週(おそらくこの本から)覚えた一番面白かった日本語は:
火の車 – Fiery chariot (which carries sinners’ souls to hell); To be in dire financial straits, or a desperate financial situation
まんじりともしない – To not sleep a wink
運動神経 – Reflexes (/Motor nerves)
尻餅をつく – To fall on one’s backside
あみだくじ – ‘Ghostleg lottery’, or a way of creating random pairings between two sets of things, e.g. to assign people roles or prizes.
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ちなみに、今週Lucy Northが翻訳した英訳「The Woman in the Purple Skirt」は出版された。将来、翻訳をしてみたいとずっと思っている私はいつか、英訳も読んでみたい。
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むらさきのスカートの女を読んだことありますか?または、日本語の小説のおすすめはありますか?もしあれば、是非聞きたいです:)